失敗しないナンバー2の選び方

こんにちは。合同会社ピットインプロジェクト代表の宮下和也です。

売上は伸び、社員も増えた。部長や課長といった役職も置いた。それなのに採用の可否も、取引先との条件変更も、最後は社長のところへ戻ってくる。

そろそろナンバー2が必要だ、と考え始めている方もいるのではないでしょうか。

ところが、幹部を置いた会社の社長ほど「思ったより楽にならない」と話されます。任せたはずなのに確認事項が増え、判断待ちの列が長くなる。妙な話に聞こえますが構造から見れば当然の結果です。

本記事では、ナンバー2を置いても機能しない理由と、人を探す前に決めておくべき三つの順序、つまり社長自身の型の見極めと役割の書き出し、権限の設計について書いていきます。

【↓↓忙しい方のための目次です↓↓】

目次

ナンバー2に自分と似た人を選んでしまう構造

機能しない原因の多くは、候補者の力量ではありません。探し始める前の整理が足りていないことにあります。

求める人物像を細かく確認していくと、社長ご自身の得意分野と重なる条件が並ぶことがよくあります。

語る力で会社を伸ばしてきた経営者は語れる人を求め、数字で意思決定してきた経営者は数字に明るい人を求める。意図した判断ではなく、仕事ができるという評価の物差しが、自分の強みの側へ寄ってしまうために起こります。

当社は経理・労務・人事・組織運営を横断して成長企業の管理体制づくりに関わっており、幹部登用が空振りに終わった場面も数多く見てきました。

同じ機能を持つ人が二人並んだところで、空いている機能は空いたままです。社長の負担が減らないのは、そのためです。

リーダーシップとマネジメントは、担う役目が違う

前提として、経営者の仕事は性質の異なる二つに分かれます。

ひとつは、目指す姿を示して人の行動をそちらへ向かわせる働きです。

もうひとつは、決まった目標に対して人と資金を割り当て、成果へ変換する働きです。

違いがはっきり出るのは、経営資源の扱い方でしょう。

前者はリスクを引き受けて採用や資金調達を行い、資源そのものを外から確保します。中小企業であれば、金融機関との交渉に出るのはたいてい社長です。後者は、確保された人員と予算を配り直し、成果に結びつける立場になります。

見ている範囲も異なります。

前者は会社全体と流れをとらえ、目的を重視します。後者は個々の部分と細部に目を向け、手段と経験値を重視します。

優劣ではなく、立っている位置の違いだと考えてください。

そしてもうひとつ、後の判断に効いてくる差があります。

マネジメントは研修も教科書もあり、適性の差はあっても経験で習得できる技術として扱われます。

対してリーダーシップの中核は、器や資質という言葉で語られる領域です。

多くの人の共感を集める話ができる人はそもそも多くなく、後から獲得するのは容易ではありません。

自分がどちら側かを見極める三つの確認

中小企業の社長は両方を求められますが、得意な側は必ずあります。感覚で判定すると自己評価は甘くなりますので、リーダーシップ側から分解して確認します。

どのような経営者のもとで会社が伸びるのかについては、研究の蓄積があります。

政治学者のジェームズ・M・バーンズが1978年に示し、経営学者のバーナード・M・バスが理論として整えた変革型リーダーシップです。

1990年代以降の主流となったこの型を実務向けに整理すると、三つに集約されます。

会社の理念と目指す先を掲げて浸透させること 
一人ひとりと個別に向き合って成長を支えること

そして新しい視点を投げかけて自分で考えさせ、行動につなげること です。

年功による序列が実質的に崩れ、転職が前提となった今、働く側にも選ぶ権利があります。所属しているのだから従うという構図は成立しません。だからこそ旗が要りますし、成長のテーマも一人ずつ別に設計する必要があります。

ここを自社に当ててみてください。

部下に向けて、自社の目指す先を熱を持って語れるでしょうか。メンバーそれぞれが何を目指しているかを、いますぐ挙げられるでしょうか。その目標と日々の業務を結びつけて支援できているでしょうか。

三つとも即答できた方はリーダーシップ側、詰まった方はマネジメント側の可能性が高いと考えられます。

数値管理や制度づくりにも手応えがないという場合は、どちらもまだ育っていない段階です。創業から数年は目の前を回すだけで手一杯になりますので、珍しいことではありません。

即答できなかったこと自体は、弱みではありません。

2001年に発表された研究では、フォーチュン500企業48社を対象に、CEOのカリスマ性と収益性の関係が検証されています。結果は単純ではなく、両者の結びつきが確認されたのは先行きが読みにくい局面に限られ、見通しが立つ局面では関係が見られませんでした。

見通しが立つ局面で効いているのは、決まった目標へ人と予算を配分して成果に変える力のほうだということです。会社が置かれた局面によって、効く側は入れ替わります。

足りない側は、自分で埋めようとしない

ここが実務上いちばん重要な分岐点です。

自分がマネジメント側だと分かったとき、多くの経営者はリーダーシップを身につけようとします。研修に通い、書籍を読み、人前で話す練習をする。しかし前述のとおり、その中核は後から獲得しにくい領域です。

反対の場合も同様です。

リーダーシップ側の経営者が、数値管理や制度設計を自力で担おうとする。こちらは技術ですから習得できますが、相応の時間がかかります。その間、会社の状況は待ってくれません。

どちらの方向でも、自分で埋めにいくのは分の悪い選択になります。

両方を高い水準で備えた経営者はごく少数ですし、その必要もありません。二つの機能がチーム内で補い合っていれば、組織は十分に機能します。

したがって、ナンバー2に託すべきものは決まっています。社長が持っていない側の仕事です。

自分が旗を掲げる側なら配分と管理に強い人を、自分が管理に強い側なら人を動かせる人を置く。

冒頭の「似たタイプを選んでしまう」は、この関係が逆になった状態です。同じ機能が二つ並ぶだけで、空いている側は空いたままになります。

人を探す前に、役割を先に書き出す

方向が決まったからといって、すぐ候補者を探し始めると同じことが起こります。

間に一段、挟むべきものがあります。それは役割です。

組織図を、いま在籍しているメンバーから書き起こしていないでしょうか。

その書き方では現状の延長にしかなりません。この会社を回すには本来どんな機能が必要か、という順序で書いてみてください。誰も担っていない空白が浮かび上がります。

財務は税理士に任せきりで、社内で資金の使い方を管理している人がいない。採用は外部に出しているが、社内に知見がないため委託先の質を評価できない。

こうした状態は、役割から書いて初めて見えるものです。

人から入ると、その人にできることが役割になってしまいます。優れた方を迎えても、得意領域へ仕事が寄っていき、本来空いていた場所は空いたまま、得意な部分だけが厚くなる。よくある展開です。

役割を先に固定すれば順序が反転し、この機能を担える人を探すという形になります。渡すものが決まっているので、面接で見るべき点も変わります。

役割から考えると、もうひとつ分かることがあります。

人を動かす力は、役職と一致していなくても構いません。肩書きはないのに周囲が集まってくる人、若手なのにその人の発言で現場が動く人が社内にいませんか。

当社が顧問先で提案するのは、その方にプロジェクトをひとつ任せる形です。

部長や課長の役職を急に振る話ではありません。プロジェクトの責任者である以上は年次を問わない、という説明はおおむね受け入れられますし、実際に会社が前へ進みます。

ナンバー2という椅子をひとつ用意するという発想から離れると、打ち手は増えます。

権限の範囲を決めなければ、置いても機能しない

役割が定まり担う人も決まった。それでも動かないことがあります。

最も多いのは、権限が渡されていないケースです。

いくらまでの支出をその人の判断で決めてよいのか。採用の可否は誰が決めるのか。取引先との条件変更はどこまで任せるのか。

ここが未定のままだと、その人はひとつずつ社長へ確認することになります。社長に集まっていた判断が、いったんその人のところへ集まり、決定権がないためまた社長へ戻る。

滞留する場所がひとつ増えただけ、という結果になりかねません。

ここは別コラムで詳しく書いたので、よければあわせてご覧ください。

Pit in Project
COO代行で社長の仕事を確実に減らす方法 | Pit in Project こんにちは。合同会社ピットインプロジェクト代表の宮下和也です。 相談も決裁も、最終的には社長のところへ集まってくる。任せられる人材を社内で育てようとしたが、なか...

もうひとつ申し添えます。

ナンバー2が自分と異なる型である以上、判断の進め方も自分とは違います。

旗を掲げる側の社長には、管理側のナンバー2が細かく映るでしょう。管理側の社長には、逆の型が大雑把に見えるかもしれません。それで問題ありません。

同じ判断をする人が必要なのであれば、そもそも補完の関係になっていないからです。

まとめ

ナンバー2が育たないという相談を受けたとき、当社が最初に確認するのは、社長ご自身に不足しているのがどちらの機能かという一点です。

ここに即答できないまま人を探すと、たいてい自分と似た型を選ぶことになります。

進め方の順序は固定できます。

はじめに自分がどちら側かを把握し、次に足りない側を特定する。それを役割として書き出したうえで、担える人を探し、最後に権限を渡す。

この順を踏むと、社内で育てるのか、外から迎えるのか、それとも当面は社長が持ち続けるのかという判断まで下せるようになります。

いま社内に、ご自身と異なる型の人を思い浮かべられるでしょうか。

浮かんだのであれば、その方がすでにナンバー2かもしれません。浮かばないのであれば、そこが空白ということになります。

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よくある質問

Q. ナンバー2の採用が続けて失敗するのは、なぜですか。
A. 候補者の力量ではなく、探す前の整理が不足している場合がほとんどです。社長が無意識に自分と近い型を選ぶため、同じ機能が重複し、空いていた機能は埋まらないまま残ります。まず自分がどちら側かを確かめてください。

Q. 自分の型は、どう判断すればよいですか。
A. 三点で確認できます。自社の目指す先を部下に熱を持って語れるか。メンバーそれぞれの目標をいま挙げられるか。その目標と業務を結びつけて支援できているか。すべて即答できればリーダーシップ側、詰まるようであれば管理側の可能性が高くなります。

Q. 足りない機能は、自分で身につけたほうがよいのでしょうか。
A. おすすめしません。管理面は技術として習得できますが時間がかかり、人を動かす力の中核は後から獲得しにくい領域です。二つの機能がチーム内で補完されていれば組織は動きますので、自分で埋めるより渡すほうが現実的です。

Q. ナンバー2は役職者でなければいけませんか。
A. その必要はありません。人を動かす力は役職と一致しません。プロジェクト単位で責任を持たせる形でも十分に機能しますし、役職を急に振るより社内の理解を得やすい進め方です。

Q. 人を置いたのに機能しません。何を見直すべきですか。
A. 権限の範囲を確認してください。決裁できる金額、採用の判断、取引条件の変更範囲が未定のままだと、判断は結局社長へ戻ります。役割と同時に、決められる範囲を明文化することが必要です。

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