管理職の外注で失敗しないための進め方

こんにちは。合同会社ピットインプロジェクト代表の宮下和也です。

管理職の仕事を外に出したい。そう考えて調べ始めると、経理代行、労務代行、プロジェクトマネージャーの委託、管理職研修、管理部長クラスの求人まで、性質の異なるものが並びます。

どれも実在するサービスですが、自社が必要としているのがどれなのかは、この並びを眺めていても判断がつきません。

外注は可能です。ただし全部ではありません。

どこまで出せるかは、管理職の仕事が三つに分かれていて、それぞれ外へ出せる度合いが違うためです。

本記事では、その三つの中身とそれぞれをどういう形で頼めばよいのか、そして契約前に社内で確定させておく範囲について整理します。

【↓↓忙しい方のための目次です↓↓】

目次

外に出せる度合いは、仕事の種類によって違う

管理職の仕事をひとかたまりで捉えると、外注の可否は判断できません。分けて見ると、線がはっきりします。

ひとつめは、手を動かす仕事です。

勤怠の集計、給与計算、請求書の処理、資料の作成、日程の調整などが該当します。ここは最も出しやすく、代行サービスにもAIにも任せられます。

ふたつめは、回す仕事です。

進捗の確認・期限の督促・成果物の品質チェック・会議の進行・ルールの整備がここに入り、条件つきで出せます。条件とはその人が社内の状況を把握できていることと、確認した結果を反映させる権限を持っていることです。

みっつめは、決める仕事です。

支出の可否・採用の合否・優先順位・取引条件の変更などが含まれます。渡す範囲が定まっていれば出せますが、定まっていなければ出せません。

自社の場合にどれが問題なのかは、社長のスケジュールを見ると分かります。ある仕事を人に頼むとき、指示するだけで済むなら手を動かす仕事です。指示のあとに確認が必要なら回す仕事です。指示そのものを作る仕事なら決める仕事にあたります。

多くの会社では、手を動かす仕事はすでに社内の誰かへ渡っています。

社長の手元に残っているのは、確認と決定に偏っているのが実情です。

手を動かす仕事だけを出しても、社長の負担が変わらない理由

外注を検討したとき、最初に手をつけるのは手を動かす仕事です。受け皿が豊富で着手も容易だからです。ところが、それだけでは社長の手が空きません。

給与計算を代行へ回したとします。勤怠を締め日までに集めるのは社内に残ります。数字が合わないときの確認も社内です。

この手当をどう扱うのかという決定に至っては、外へ出しようがありません。AIで資料が速く仕上がっても、その資料をもとに何を決めるかは手元に残ります。

管理職の一日がどう使われているかは、古くから観察の対象になってきました。

ヘンリー・ミンツバーグが1975年に発表した調査は、経営者が腰を据えて計画を練る時間はごくわずかで、大半が短い応答の積み重ねに費やされていることを明らかにしています。

半世紀前の記録ですが、いまの中小企業の社長の一日も構造としては変わりません。

つまり、社長の時間を圧迫しているのはまとまった作業時間ではなく、細切れに入ってくる確認と決定です。作業を十件外へ出したところで、この回数が減らなければ負担はほとんど変わりません。

AIを導入したのに楽にならないという場合も、構図は同じです。

AIが引き受けるのは主に手を動かす仕事で、その成果物を確認する仕事はむしろ増えます。何を任せ、何は人が見るのかを決めていなければ、確認の回数だけが積み上がっていきます。

負担が生じているのは回す仕事と決める仕事なのに、外へ出すのは手を動かす仕事だけ。管理職の外注が空振りに終わるときは、たいていこのずれが起きています。

回す仕事を引き受ける商品は、市場にほとんどない

では回す仕事を頼めばよいのかというと、ここで別の壁に当たります。

この領域を丸ごと引き受ける商品が、市場にほとんど流通していないためです。

作業を代行する会社は豊富にあります。助言をくれる顧問やスポットコンサルも探せば見つかります。しかし、進捗を追いかけて品質を確かめ、実行に責任を負う役割はパッケージ化された商品としてはほとんど存在しません。

社長が管理職を外注したいと言うときに頭にあるのは、代わりに現場を見て、決めて、動かしてくれる存在です。手を貸す相手でも、口を貸す相手でもありません。

探しても見つからないという場合、探し方が悪いのではなく市場の構造にその段差があります。

だからこそ、依頼するときはどういう関わり方で頼むのかを選ぶ必要があります。

なお、こうした空白は市場だけの問題ではありません。

▼この構造については別のコラムで扱っています。

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頼み方は四つあり、向いている領域が異なる

外部と組む形はひとつではありません。当社では四つに整理しており、それぞれ向いている領域が異なります。

助言を受ける形は見立てを伝えてもらい、決めて動くのは社内が担うものです。

決めるところの精度は上げたいが、決定権は手放したくない場合に向きます。顧問やスポットコンサルがこれにあたり、月額の相場は20万円前後です。

一緒にやる形は社内の担当者と並走しながら、外部も手を動かすものです。

進捗や品質を見て回す仕事を社内に定着させたい場合に選びます。担当者が育つのはたいていこの形です。

引き受ける形は業務ごと外へ出すものです。

手を動かす仕事と回す仕事の一部が対象になります。いわゆる代行に最も近い形です。

採用から作る形はどのような人材が必要かを設計する段階から入り、迎えた人が動ける状態になるまで整えるものです。

人を紹介するのではなく、受け入れる側を作る仕事にあたります。

近年は、この手前にAIへ任せるという受け皿が加わりました。手を動かす仕事の一部については、現時点で最も安い受け皿です。

ただし、AIに何を任せ品質をどう確認するかを決めるのは回す仕事と決める仕事にあたるため、四つの形をどう使い分けるかという問題は残ります。

決める仕事は、範囲が決まっていなければ渡せない

依頼形態が定まっても、それだけでは動きません。契約前に決める仕事のうち、どこまでを相手に渡すかを確定させる必要があります。

支出はいくらまで相手の裁量で決めてよいのか。稟議が必要になる線はどこか。採用は書類選考、面接、内定のどこまでを任せ、最終決定は誰が行うのか。

既存の取引条件はどこまで変更してよく、新規の発注はどの範囲まで認めるのか。担当替えや業務の振り直しを、その人の判断で行ってよいのか。そして、誰に対して指示を出せる立場とし、それを社内へどう周知するのか。

これらを決めないまま人を迎えると、迎えられた側はひとつずつ社長へ確認するほかありません。

社長に集まっていた決定が、いったんその人のところへ集まり、決める権限がないためまた社長へ戻る。滞留する場所がひとつ増えただけ、という結果になりかねません。

当社には年間100社を超える相談が寄せられますが、この範囲を書面にできている会社はほとんどありません。責める話ではなく、社長がその場で決めれば会社が回ってきたからです。

回らなくなるのは人が増えてからです。

同じことは社内の管理職にも当てはまります。役職を与えたのに動きが変わらない場合、本人の資質より先に渡された決定権があるかどうかを確認してください。

育っていないのではなく、渡していないことが原因である場合が少なくありません。

なお、外部から経営人材を迎える場合も決めておく範囲は同じです。

▼こちらのコラムで詳しく解説しています。

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依頼先を見極めるときの三点

ここまで整理できていれば、相手の見極めは難しくありません。確認するのは三点です。

対応できる領域はどこか。

手を動かす仕事しか引き受けない相手に、回す仕事を期待しても機能しません。進捗管理と品質確認まで含むのかを、契約前に明示的に確認してください。

権限を受け取る姿勢があるか。

決めてよい範囲を提示したとき、それを引き受ける相手かどうか。すべて確認しますという回答であれば、決める仕事は渡せません。

社内に仕組みが残るか。

契約を終えた時点で元へ戻る形なのか、社内に手順とルールが蓄積される形なのか。後者でなければ依存が続きます。

費用の物差しも挙げておきます。

管理部長クラスを採用する場合、年収は800万円からが目安となり、社会保険料の会社負担を含めれば月90万円前後の固定費になります。

外注はこれより下がりますが、金額の多寡よりもどこまで任せるかで必要な相手が変わります。

作業だけを頼む場合と、決める手前まで委ねる場合とでは探す相手も費用も別物です。

このうち、回す仕事から決める手前までをまとめて引き受ける形については、別のコラムで詳しく整理しています。

▼採用と外注のどちらを選ぶかで迷われている場合は、あわせてご覧ください。

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まとめ

管理職の外注は可能です。ただし全部ではありません。

契約前に決めておくべきことは、二点あります。

ひとつは、三つの仕事のうちどこまでを外に出すのか。

もうひとつは、決める仕事のうち、どの決定をどこまで渡すのか。

前者が決まれば依頼形態と相手が決まり、後者が決まれば迎えた人が動けるようになります。この二点が決まらないままだと、どれほど適した相手を見つけても確認の相手がひとり増えるだけで終わります。

自社の仕事を、手を動かす仕事、回す仕事、決める仕事に分けてみてください。

分ける単位は部門ごとです。財務・経理、労務、人事、総務、法務、運営管理、マーケティング・営業、そして経営。

この単位で見ていくと、渡せるものと渡せないものの輪郭が現れます。

自社の仕事のうち、すでに手放せているのはどこで、まだ社長に残っているのはどこか。現在地の確認から始められる無料相談を実施しています。

外注もAIも入れたのに手が空いていない。そう感じている方は、お気軽にお申し込みください。

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管理職・マネージャーの外注に関するよくある質問

Q. 管理職の仕事は、外注できますか。

A. 一部は可能です。管理職の職務は作業、管理・運用、判断の三層に分かれ、外へ出しやすいのはこの順になります。作業はAIと代行サービスへ任せられます。管理・運用は条件つきで出せます。判断は、渡す範囲が定まっていれば出せますが、定まっていなければ出せません。

Q. 管理職を外注するメリットとデメリットは何ですか。

A. 採用より早く着手できること、月90万円前後の固定費を動かせる形に変えられること、複数領域をまたいで依頼できること、合わなければ戻しやすいことが利点です。一方、判断の範囲を決めなければ機能しないこと、作業だけ出しても社長の負担が変わらないこと、社内に仕組みを残す設計のない外注は中止した時点で元へ戻ることが難点になります。依頼前の切り分け次第で、どちらにも転びます。

Q. 管理職の外注にかかる費用の相場はどの程度ですか。

A. 比較の基準としては、管理部長クラスを採用した場合の会社負担が月90万円前後です。年収800万円に社会保険料の会社負担を加えた水準になります。外注はこれより下がりますが、金額よりもどの層まで任せるかで変わります。作業だけを依頼する場合と、判断の手前まで委ねる場合とでは、必要な相手も費用も別物です。

Q. AIが進めば、管理職の外注は不要になりますか。

A. 逆だと考えています。AIが引き受けるのは主に作業層で、Microsoftのデータでも、エージェントが1年で15倍に増えた先に人間へ残ったのは、方向性を決め、判断し、成果に責任を持つ仕事でした。加えてAIエージェントを訓練し品質を確認するという新しい管理業務が増えます。管理・運用と判断の層を誰が持つのかという問題は、AIによってむしろ大きくなっています。

Q. 管理職の外注は、どこから着手すべきですか。

A. いま社長の時間を実際に消費しているのが作業なのか、管理なのか、判断なのかを切り分けるところからをおすすめします。多くの場合、痛みが出ているのは管理と判断の層で、そこを見ないまま作業だけをAIや外注へ出しても、負担はあまり変わりません。

出典・参考

・Henry Mintzberg “The Manager’s Job: Folklore and Fact” Harvard Business Review(1975年7-8月号)——管理者の一日は腰を据えた計画立案ではなく、短時間の応答の連続で占められている
・パーソル「副業・フリーランス人材白書2026」——助言中心で関わる外部人材(顧問・スポットコンサル)のハイクラス層における月額報酬の中央値

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