幹部を雇わずに経営機能だけを持つ方法は?米国で広がる「フラクショナル役員」とは

こんにちは。合同会社ピットインプロジェクト代表の宮下和也です。

経営幹部を迎えたいけれど年収1000万円を出せる状況ではない、というお話を年商数億円規模の経営者から伺う機会がよくあります。必要性は分かっていても、固定費として抱えられるかどうかは別の判断になります。

この行き詰まりに対して、米国ではそもそも雇わないという方向で解決が進みはじめています。

日本語の情報はまだ多くありませんが、フラクショナル役員と呼ばれる働き方が広がっており、日本にも遅れて入ってくると考えています。

今日はこの潮流の中身と、日本で今後どうなっていくのかを、成長企業に伴走している立場からの見通しとして書いていきます。

【↓↓忙しい方のための目次です↓↓】

目次

米国では何が起きているのか

フラクショナル(fractional)という単語には、分数や一部分といった意味があります。

経営を担うポジション、たとえばCOOやCFO、CHROといった役割を、週に1日や月に数回という単位で切り出して任せる。これがフラクショナル役員と呼ばれる形です。

規模感をつかむうえで参考になるのが、米国でフラクショナル役員のマッチングを手がけるVenduxが2026年5月に公表した数字です。

  • 世界市場は57億ドルを超え、年率14%で拡大している 調査会社のガートナーは、中堅企業の3割超が2027年までに導入すると見込んでいる
  • 米国の中小企業では、2026年末までに4割を超える企業が使いはじめる見通しとなっている
  • この形で働く役員のうち85%が、同じ会社に1年以上継続して関与している

このなかで最も重要なのは、最後の継続率だと考えています。

というのも、転職までの一時的なつなぎとして選ばれているのであれば、継続率はここまで高くなりません。ひとつの働き方として定着しているという読み方になります。

つまりこれは流行として一時的に伸びている現象ではなく、組織のつくり方そのものが変わりはじめているということです。

なぜ米国で急速に広がったのか

背景はシンプルで、常勤の役員を抱えることが固定費として重くなりすぎたためです。

米国では人件費の上昇が続いており、CFOを常勤で迎えれば年間で数千万円規模の負担になります。その一方で、コンプライアンス対応やデータ活用、AIの導入など、経営が抱える論点は増え続けています。

経営者の勘と体力だけで押し切れる範囲を、論点の量がすでに超えてしまっています。

フルタイムで雇う余力はない。それでも経営人材の判断は必要になる。この二つの間で身動きが取れなくなっていた状況を解いたのが、必要な分量だけ確保するという発想でした。

設備を購入せずリースで賄うのと同じ発想が、経営の機能にも及びはじめたということです。

日本ではどうなっていくのか

日本ではさすがに広がらないのではないか、と感じる方もいると思います。ただ私は、呼び方と受け止め方が違うだけで、同じ動きはもう始まっていると見ています。

いくつか数字を並べてみます。

外部のプロ人材を副業や兼業という形で受け入れた経験のある中小企業は、2割程度にとどまります(中小企業白書2025)。逆に見れば、残る8割はこれから検討に入る層です。

すでに受け入れている企業では、依頼する案件数の中央値が3件から5件へ伸びました(パーソルキャリア「HiPro」白書2026)。様子を見る段階を抜けて、日常的に使う段階へ入ったということです。

ハイクラスの外部人材にかかる月額費用は、中央値で20万円ほどです。常勤役員を迎える場合の人件費と比べれば、数分の1に収まります。

後継者が決まっていない企業は50.1%にのぼります(帝国データバンク2025年調査)。数字が改善している中身は親族以外へ範囲を広げる動きであり、血縁に頼らず事業を継ぐ判断はすでに増えています。

部長クラスやプロジェクト単位での部分的な起用は、日本でもすでに一般的になりました。これがCxOの層にまで及ぶのは、米国に2年から3年ほど遅れる形になるとみています。

そのうえで私が見込んでいるのは、2028年から2030年にかけての変化です。

管理部長を常勤で抱える代わりに、外部のCxOとAI、それにパートや業務委託を組み合わせて運営する。この形が、従業員20名前後までの会社にとって当たり前の選択肢になっていくはずです。

背景には3つの事情があります。

ひとつめは、中小企業にはそもそも経営管理を担える人材がいないことです。

採用の意思があっても、市場に候補者が存在しない状況であり、地方ではその傾向がさらに強くなります。

ふたつめは、賃金の上昇と社会保険料の負担増により、役員層の固定費が今後いっそう重くなることです。

みっつめは、AIの進化です。

処理業務をAIが引き受け、人の側が意思決定と設計、関係者との調整だけに集中できるようになれば、専門家ひとりで5社から10社を担当できます。

そうなると月額の水準は下がり、規模の小さい会社でも十分に届く価格帯へ移っていきます。

日本で成立する形は、米国とどこが違うのか

ただし、日本に持ち込むにあたって注意すべき点があります。

米国では専用のマッチングサービスを経由して参画する流れが主流ですが、日本の中小企業では、優秀な人を紹介してもらうだけでは動きません。

というのも、迎える側に管理の土台がないうえ、受け取った助言を実務へ落とせる担当者が社内に不在だからです。

ですので日本で成立するのは、助言を渡すだけのアドバイザー型ではなく、実務まで並走して引き受ける形になります。

私たちの提供内容も、ご支援の期間が長くなるほどこの形への要望が強まり、外部の管理部長と現場担当をセットで置く体制へと変わってきました。

体制づくりの助言や戦略の壁打ちで終えるのではなく、社内の手が足りない部分はチームで実務まで持ちます。

この形にこだわっているのは、立派な理念を掲げているからではありません。ここまで踏み込まなければ小規模な会社では成果が出ないと、支援の現場で分かったためです。

さいごに

経営幹部は、抱える対象から必要な分だけ借りる対象へと変わりつつあります。米国で出ている数字は、数年後の日本を先取りしたものだと見ています。

そして日本で定着するのは、助言だけを渡す形ではなく、実行までを引き受ける形になるはずです。受け入れる側の体制が整っていない以上、それ以外の形では機能しにくいからです。

経営人材は必要だが常勤で迎えるほどではない。そう感じているのであれば、まずは自社にどの機能が足りていないのかを確かめるところから始めてみてください。

出典:Vendux「10 Numbers That Will Reshape How You Think About Fractional Executives in 2026」(Henning Schwinum氏、2026年5月)/パーソルキャリア「副業・フリーランス人材白書2026」/2025年版中小企業白書(中小企業庁)/帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」

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よくあるご質問

Q. フラクショナル役員とは何ですか?

A. 経営を担うポジションを週に1日や月数回という単位で切り出し、その分だけ関与してもらう仕組みです。フラクショナルには分数や一部分という意味があり、常勤で抱える代わりに必要な分量だけ確保する考え方を指します。米国の中小企業では、2026年末までに4割超が使いはじめる見通しです。

Q. 顧問やコンサルティングと何が違いますか?

A. 関与の深さと責任の範囲が違います。顧問や助言を担う立場は提案までを役割としますが、フラクショナルな役員は経営の意思決定に加わり、実行までを担います。特に日本の中小企業では、助言を実行へ移す担当者が社内にいないことが多いため、実行まで引き受ける形でなければ機能しにくいのが実情です。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

A. ハイクラスの外部人材にかかる月額費用は、中央値で20万円ほどとされています。常勤役員を迎える場合の人件費と比べると数分の1に収まりますが、関与する範囲や実務をどこまで引き受けるかによって金額は変わります。

Q. どのくらいの規模の会社に向いていますか?

A. 社員20名以下で、組織を整えたいものの経営者自身が実務にも入っている段階の会社が中心です。専任の管理部長を迎えるにはまだ早く、それでも経営管理の判断は日々発生している。この時期にもっとも機能します。

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