なぜ経営課題は相談先を増やしても解決しないのか?領域の「あいだ」に落ちる構造

こんにちは。合同会社ピットインプロジェクト代表の宮下和也です。

人手が足りないので採用に力を入れたい、というご相談をいただくことがあります。ただ、状況を細かくうかがうと、募集を出す前に手を入れるべき箇所が見つかることは少なくありません。

たとえば、採用しても続かない、育てる担当が決まっていない、動けていない人に誰も指摘していない。この場合、足りないのは採用力ではなく、入ってきた人を受け止める側の体制です。

経営課題の多くは、このように専門領域の内側ではなく、領域と領域の”あいだ”に落ちています。

そして厄介なことに、この”あいだ”は相談先を増やしても埋まりません。

今日は、専門家に依頼しているのに会社全体としては変化を実感しにくい理由と、私が特定の解決策を売らないことにこだわっている理由を書いていきます。


【↓↓忙しい方のための目次です↓↓】

目次

なぜ専門家に相談しても、会社全体は変わりにくいのか

外部の専門家はそれぞれ、自分の担当分野を入口にして会社の状態を捉えます。

採用支援会社であれば求人と選考の流れから、IT支援会社であればシステムと業務効率の観点から会社を見ます。社労士であれば労務手続きが適法に回っているか、税理士であれば決算と申告の数字が入口になります。

これは当たり前のことですし、専門性の高さに事業が助けられる場面は数えきれません。

私自身も多くの専門家の方と連携しながら現場を整えていますので、いてくださらないと成り立たないというのが実感です。

そのうえで、構造としてひとつだけ避けられないことがあります。

診断の入口が担当分野である以上、提案される解決策もまた担当分野の中から出てくるということです。

たとえば、採用が弱そうに見えれば募集の強化、業務が滞っていそうに見えればシステムの導入、人が育っていなさそうに見えれば研修や評価制度の整備が提案されます。どれもその分野の判断としては正しい打ち手であり、間違っているわけではありません。

問題が起きるのは、本当の原因が担当分野の外側にあるときです。

先ほどの採用の話が、まさにこの形です。

人が辞め続けている会社で採用の強化を提案されたとして、人手が足りていないのは事実ですから、提案そのものが的外れというわけではありません。しかし辞める理由が現場のマネジメントや受け入れ体制にあるのなら、入口を広げたところで在籍者は増えていきません。

というのも、新しく入った人に誰が何を教えるのか、どの状態になれば独り立ちと判断するのか、うまくいっていないときに誰がいつ本人へ伝えるのか。こうした取り決めがないまま人数だけを増やすと、入った人は判断に迷い、教える側の手は塞がり、もともといたメンバーには不公平感が残ります。

そして半年後、経営者はまた人手不足を実感することになります。

同じことは他の領域でも起こります。

システムを導入しても業務の流れが言語化されていなければ現場は元のやり方に戻りますし、評価制度を整えても経営者が何を評価したいのかが言葉になっていなければ運用は形式だけのものになります。

これは誰かが手を抜いた結果ではありません。それぞれが自分の持ち場で正しく仕事をしていても、全体を束ねて着手の順番を決める役割が空いていれば、増えていくのは範囲を限定した改善ばかりになってしまうのです。

経営課題は、どこに落ちているのか

会社で起きている問題がひとつの部署の中だけで完結していることは、私の経験上ほとんどありません。

たとえば売る側と支える側、経営者と現場、管理職と担当者、採る仕事と育てる仕事。

数字で語れる部分と感情でしか語れない部分、掲げた理念と実際の日々の行動。こうした境目に、伝わらなかった情報や処理されなかった感情が少しずつ溜まっていきます。

その象徴が、社内で日常的に交わされる言葉の粗さです。

たとえば現場から「なるべく早く進めます」「本気でやります」「しっかり見ておきます」といった報告が上がってきます。前向きな姿勢に見えますし、実際に本人たちは前向きに取り組んでいるのだと思います。

ただ、経営の側から見ると、この曖昧さはかなり危険な信号です。

早くというのは今日中なのか週内なのか、本気でというのはどこまでやれば果たしたことになるのか、見ておくというのは誰が何をどの基準で確認することなのか。

ここが定まらないままだと仕事の合格ラインも責任を持つ人も決まらず、決まっていないものは誰も引き受けられないため、最後は経営者の手元に戻ってきます。

この種の歪みは、専門家の提案書に載ることがありません。会計データにも表れませんが、現場ではまさにここで作業が止まっています。

そして立て直しの現場は、資料をまとめて報告すれば終わるようなものでもありません。

実際、経営者と連絡が取りづらくなった会社で、残ったメンバーと一緒に業務の流れを組み直したことがあります。資金が細っている状況のなかで支払いの順番を組み替え、取引先と条件を話し合いながら一件ずつ着地させたこともありました。

こうした場面で本当に役に立つのは、外から正しい意見を述べてくれる人ではありません。

数字の状態も業務の流れも、働く人の感情も経営者が本当に望んでいることも、現場に流れている空気までまとめて把握したうえで、着手する順番を決められる人だと思っています。

そして必要であれば「今は人を増やす時期ではありません、先に受け入れる側を整えましょう」と、会社全体を根拠にして言えること。外部の人間が入る意味は、ここにあると考えています。

なぜ「売りたいもの」を持たないことにこだわるのか

ピットインプロジェクトは、決まった商品を売る会社ではありません。

採用支援やシステム導入、制度設計といった形で提供物を先に固定していないのには、はっきりとした理由があります。

売りたいものが決まっていると、課題の見え方そのものがその商品へ引き寄せられてしまうからです。

これは本人の意志の強さで防げるものではなく、人は自分が解決できる形で目の前の問題を認識してしまうものだと思っています。

必要なのは、経営者が向かおうとしている方向に対して、この会社に今なにが足りていないのかを余計な前提なしに見ることです。

実際の現場では、人を増やすべき局面もあれば、業務の型をつくるべき局面もあります。評価の基準を決めるべきときもあれば、業務の流れを描き直すときも、管理職を育てるべきときもあります。

どれが必要かは着手する前に決められるものではなく、会社の状態と現場で詰まっている場所、そして経営者が描いている先を見たあとに、順番として決まってくるものです。

ですので私は「採用の前に、今いるメンバーの役割分担を整理しましょう」「システムより先に、業務の流れを書き出しましょう」とお伝えすることがあります。

提案された施策が間違っているからではありません。必要な施策であっても順番が合っていなければ、現場にとっては新しい負荷が増えるだけになってしまうからです。

何をやるかということ以上に、どこから整えるかを見誤らないために、自分の商品の都合を判断材料から外しています。

もっとも、商品を持たないというのは何でも引き受けるという意味ではなく、会社にとって本当に必要なことを見極めるために判断を歪める材料を持たないという意味です。

採用の会社でもシステムの会社でも制度の会社でもない立場だからこそ、それは今必要ですとも、それはまだ早いですとも申し上げられます。

この距離があるからこそ、経営者の隣で各分野の専門家の力も借りながら、全体を根拠に判断できるのだと思っています。

では、何から見直せばよいのか

複数の専門家に依頼しているのに手応えがないと感じているなら、次の3点を確認してみてください。

ひとつめは、全体を横断して見ている人がいるかどうかです。

分野ごとの担当者はいても、それらをまとめて優先順位を決める役割が空席になっていないかを確かめてみてください。

ふたつめは、社内でやり取りされる言葉が具体的かどうかです。

期限と基準と担当者が入っていない依頼や報告が日常になっている場合、決まっていないものが社内に溜まっているサインだと考えてよいと思います。

みっつめは、やることの順番が決まっているかどうかです。

課題の一覧はあるのに着手する順番が決まっていないと、良い施策から順番に現場の負担へと変わっていってしまいます。

どれかに心当たりがあるのなら、必要なのは相談先をもう一社増やすことではなく、会社の現在地を一度まとめて見えるようにすることかもしれません。

さいごに

専門家に依頼すること自体には何の問題もありません。むしろ外部の専門性を借りずに成長を支え続けるのは、どこかで無理が出てくると思います。

ただ、採用もシステムも制度も労務も数字も、それぞれ別の入口から見ているだけでは、本当に詰まっている境目が誰の視界にも入らないままになってしまいます。

伸びている会社ほど、新しい施策を足す前に会社全体の状態を一度確認してみる価値があります。

見てくれる人を増やすことと、全体が見えるようになることは、まったく別のことなのです。

無料オンライン相談

会社のどの機能が動いていて、どこが空白になっているのか。現在地をまとめて見えるようにするところから始められる無料相談を実施しています。

複数の専門家に依頼しているのに手応えがない、という段階でも構いませんので、お気軽にお申し込みください。

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よくあるご質問

Q. 複数の専門家に相談しているのに、組織が変わった実感がありません。なぜですか?

A. 課題がそれぞれの担当分野の内側ではなく、分野と分野の境目に残っている可能性があります。専門家は担当分野を入口に会社を捉えるため、提案される解決策もその範囲から出てくることになり、原因が範囲の外にある場合は正しい打ち手であっても状況が動きません。まずは全体を横断して着手順を決める役割が空席になっていないか、確認してみてください。

Q. 採用がうまくいかないのですが、まず何を見直すべきですか?

A. 募集や選考を見直す前に、入社後の受け入れ体制を確認することをおすすめしています。誰が何を教えるのか、どの状態で独り立ちとするのか、うまくいっていないときに誰がいつ伝えるのか。ここが決まらないまま人数を増やすと定着せず、教える側の負担だけが積み上がっていきます。退職が続いている状態での募集強化は、費用が増えるわりに在籍者が変わりにくい打ち手です。

Q. 経営課題の相談先は、どのように選べばよいですか?

A. その相手が決まった商品を持っているかどうかを見てみてください。商品を持つ相手に相談すると解決策はその商品の範囲に収まりますが、これは相手が不誠実なのではなく、課題を認識する入口がそこにあるためです。着手の順番を決める段階では、商品の都合を持たずに全体を横断して見られる相手が向いています。

Q. コンサルティングとは何が違いますか?

A. 提案して終わりにしない点が最も大きな違いです。どこから手をつけるかを決めたあとも、社内で運用が回るようになるまで一緒に手を動かします。助言、並走、実務の巻き取り、採用からの設計という4つの形を、課題ごとに使い分けています。

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